出会い——yuri_ouchieigo さん

Y
ゆりさん
おうち英語の実践的なリソース紹介で人気のInstagramer。実際にお子さんと使っているアプリや教材を、短い動画でわかりやすく紹介されています。

ゆりさんの動画を見ていて、まず思ったのは「選んでいるリソースのセンスがとてもいい」ということです。どれも教育的に質の高いツールばかりで、実際に使っている親御さんの評価も高いものです。おうち英語を始めたい保護者の方には、ぜひフォローをおすすめします。

ゆりさんが紹介されていたリソースを見て、私も改めて各ツールを調べてみました。そして、言語の専門家として一つだけ付け加えたい視点があります。どのツールを使うかより、「どの順番で使うか」がもっと大切だということです。

赤ちゃんはフォニックスから始めない

ここで、ちょっとした思考実験をしてみてください。

赤ちゃんが母語を覚える順番を思い出してください。

この順番は偶然ではありません。音声での理解が先にあって、初めて文字が意味を持つのです。"apple"という文字列を見て意味がわかるのは、「アポー」という音と赤いリンゴの映像がすでに頭の中にあるからです。

ところが、日本のおうち英語では、この順番が逆になることがよくあります。英語の音声にほとんど触れていない段階で、いきなりフォニックスやアルファベットの読み書きから始めてしまう。これは、まだ日本語を一言も聞いたことがない赤ちゃんに、ひらがなの書き取りをさせるようなものです。

フォニックスは「音と文字をつなぐ技術」です。つなぐべき「音」がまだ頭の中になければ、フォニックスは空回りします。まず耳と口を育てて、それから目と手を育てる。この順番が、自然な言語習得の順番です。

Phase 1(耳と口)→ Phase 2(目と手)

私がおすすめするのは、おうち英語のリソースを2つのフェーズに分けて使うことです。

Phase 1:耳と口を育てる(まずはここから)

英語のに大量に触れる段階。歌、動画、アニメ、ゲーム、読み聞かせ——すべて「聞く」「見る」「声に出す」が中心。文字は意識しなくてOK。お子様の頭の中に英語の音と映像のストックを蓄積する時間です。

目安:英語の歌を何曲か歌える、簡単な指示("Stand up" "Sit down")が聞いてわかる、色や数字や動物の名前を10〜20個言える——このくらいの「耳と口の土台」ができたら、Phase 2に移行してOKです。

Phase 2:目と手を育てる(土台ができてから)

Phase 1で蓄積した音を、文字に結びつける段階。フォニックス、アルファベットの読み書き、レベル別リーディング。「この音はこの文字で書くのか!」という発見が、Phase 1の土台があるからこそ意味を持ちます。

目安:Phase 1で数ヶ月〜1年ほど音声に触れた後。お子様の年齢や英語への親しみ度合いによって調整してください。

7つのリソースを2フェーズで整理する

ゆりさんが紹介されていた7つのリソースを、このフェーズの視点で整理してみます。繰り返しますが、どのツールも素晴らしい——問題は「いつ使うか」だけです。

🎵
Pinkfong ABC Phonics
無料(アプリ内課金あり)· 対象:0〜8歳
Baby Sharkで有名なPinkfongの英語アプリ。アルファベットの歌、書き取り、ゲームが中心。音楽のクオリティが高く、子どもが夢中になりやすい。
James's take:歌の部分はPhase 1の「耳を育てる」に最適。ただし、書き取り(トレーシング)やフォニックスドリルの機能は、Phase 2で使うのがより効果的。歌だけ先に楽しんで、書き取りは後からが理想的です。
Phase 1(歌)→ Phase 2(書き取り)
📱
トド英語(Todo English)
月額約2,500円 · 対象:3〜8歳
シリコンバレー発、A〜Zの26レベルで構成された総合英語学習アプリ。フォニックス、動画、絵本、スピーキング練習まで網羅。LINEで学習状況を通知してくれるので保護者も安心。日本語のサポートがあるのも大きな特長。
James's take:非常に完成度の高いアプリ。動画コンテンツはPhase 1に使え、フォニックスと文法のカリキュラムはPhase 2に最適。お子様が英語の音にある程度親しんでからスタートすると、学習効率が最大化します。逆に、英語ゼロの状態でいきなり始めると、フォニックスの部分が「意味のない記号の暗記」になりがち。
Phase 2 推奨(動画は Phase 1 OK)
🐝
Jolly Phonics
書籍・教材 · イギリス発
42の音素を体系的に教えるフォニックスプログラム。世界中のインターナショナルスクールで採用されている実績あり。歌とアクション(身体の動き)で音を覚えるのが特徴。
James's take:フォニックスプログラムとしては世界最高峰の一つ。ただし、その名の通り「フォニックス=文字と音の対応」に特化しているため、Phase 2の教材です。英語の音がまだ耳になじんでいない段階で使うと、42の音素が抽象的な記号の暗記になりかねない。Phase 1で耳が育ってから使うと、「ああ、あの音はこう書くのか!」と点と点がつながります。
Phase 2 推奨
🦊
Little Fox
月額制 · 韓国発
3,500以上のアニメーション英語ストーリーを収録したライブラリ。レベル別に分かれており、簡単な絵本レベルから長編物語まで幅広い。映像とナレーションが同時に流れるので、自然なリスニング学習ができる。
James's take:これはPhase 1に最適なリソースです。映像を見ながら英語の音を浴びる——まさに「耳と口を育てる」ための設計。レベル1〜2のコンテンツは英語ゼロのお子様でも楽しめます。個人的にはPhase 1の最初期に一番おすすめしたいツールの一つ。
Phase 1 推奨
🎓
Khan Academy Kids
完全無料 · 対象:2〜8歳
あのカーン・アカデミーの幼児版。英語だけでなく算数や理科も含む総合学習アプリ。完全無料かつ広告なしという驚異的なサービス。ただしインターフェースは英語のみ。
James's take:無料でこのクオリティは本当にすごい。英語での指示が理解できる程度の耳が育っていれば非常に効果的。Phase 1の後半〜Phase 2の初期に導入するのがおすすめ。英語がまったくゼロの状態だと、何を言われているか分からず挫折しやすいので、Little FoxやPinkfongの歌で耳を慣らしてから入ると良いでしょう。
Phase 1 後半〜Phase 2
📚
Raz-Kids
月額制(学校・教室向けライセンス)
アメリカの小学校で広く使われているレベル別リーディングプログラム。aa〜Z2まで29レベル、数百冊のデジタル絵本が読める。読んだ後にクイズがあり、理解度を確認できる。
James's take:リーディング力を段階的に伸ばすには最高のツール。ただし完全にPhase 2の教材です。フォニックスの基礎がある程度身についた後に使うと、読む力が飛躍的に伸びます。最低レベル(aa)でも、アルファベットの音が分かっていることが前提になっています。
Phase 2 推奨
✏️
Education.com(Typing Club)
無料〜月額制
英語のワークシートやアクティビティが豊富な教育プラットフォーム。特にTyping Clubは英語のタイピング練習に特化しており、フォニックスの定着にも役立つ。
James's take:ワークシートやタイピングはPhase 2の補強に最適。紙に書く練習やキーボード入力は、フォニックスを「身体で覚える」ための手段として効果的です。Phase 1で必要になることはほぼないでしょう。
Phase 2 推奨

おすすめの導入順序

もし私が「おうち英語をゼロから始める保護者」にアドバイスするなら、こんな順番を提案します。

ステップ1(Phase 1の入口):Pinkfongの歌 + Little Fox のレベル1ストーリーで、英語の音を毎日浴びる。10〜15分/日で十分。「勉強」ではなく「楽しい動画の時間」として。

ステップ2(Phase 1の定着):数ヶ月後、お子様が英語の歌を口ずさんだり、簡単な英語("Yes" "No" "Thank you" など)を自然に使い始めたら、Khan Academy Kids を追加。英語の指示を聞いて活動する経験を積む。

ステップ3(Phase 2へ移行):お子様が20〜30の英単語を音で知っている段階で、Jolly Phonics またはトド英語で「文字と音の対応」を学び始める。「ああ、"cat" ってこう書くのか!」と気づく瞬間が訪れます。

ステップ4(Phase 2の発展):フォニックスの基礎が身についたら、Raz-Kids で実際の本を読み始める。Education.com のワークシートやTyping Clubで「書く」力も同時に育てる。

「全部一度に始めたい」という気持ちへ

ここまで読んで、「それだと時間がかかりすぎない?」と思われたかもしれません。

たしかに、Phase 1 → Phase 2 の順番を守ると、フォニックスを始めるまでに数ヶ月〜半年のタイムラグが生まれます。その間、「うちの子はまだABCも書けないのに、あの子はもうフォニックスをやっている」と焦る気持ちもわかります。

でも、言語は身体行動です。土台のない場所に建物を建てても、すぐに崩れます。Phase 1で耳と口の土台をしっかり作ったお子様は、Phase 2に入ってからの進みがびっくりするほど速い。フォニックスを「音と文字の対応」として瞬時に理解できるからです。一方、耳の準備なしにフォニックスを始めたお子様は、一つひとつの文字と音の対応を機械的に暗記する必要があり、時間がかかる上に定着しにくい。

急がば回れ——Phase 1の「遠回り」が、実は最短ルートなのです。

シリーズ「ネットの英語教育アドバイスを考える」について

この記事は、オンラインで見つけた英語教育に関するアドバイスやリソースを、言語教育の専門家の視点から評価するシリーズの第1回です。

ネット上には素晴らしいアドバイスがたくさんありますが、「何を使うか」だけでなく「いつ・どの順番で使うか」「自分の子に合っているか」を考えることが大切です。このシリーズでは、保護者の皆さんが情報の海で迷わないための羅針盤になれたらと思っています。

「こんなアドバイスを見つけたけど、James先生はどう思う?」というリクエストがあれば、ぜひお問い合わせからお気軽にお送りください。

Ready Englishでは、お子様の現在の英語レベルに合わせたカリキュラムを設計します。Phase 1の段階にいるお子様には「耳と口を育てる」コンテンツを中心に。Phase 2に進む準備ができたお子様には、教科書『Here We Go!』に対応したSRS学習で体系的に読み書きの力を育てます。

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