出会い——yuri_ouchieigo さん
ゆりさんの動画を見ていて、まず思ったのは「選んでいるリソースのセンスがとてもいい」ということです。どれも教育的に質の高いツールばかりで、実際に使っている親御さんの評価も高いものです。おうち英語を始めたい保護者の方には、ぜひフォローをおすすめします。
ゆりさんが紹介されていたリソースを見て、私も改めて各ツールを調べてみました。そして、言語の専門家として一つだけ付け加えたい視点があります。どのツールを使うかより、「どの順番で使うか」がもっと大切だということです。
赤ちゃんはフォニックスから始めない
ここで、ちょっとした思考実験をしてみてください。
赤ちゃんが母語を覚える順番を思い出してください。
- まず聞く——何ヶ月も、ひたすら周りの言葉を聞いている
- 次に話す——単語が出始め、やがて文になる
- その後読む——文字と音の対応を学ぶ(これがフォニックス)
- 最後に書く——鉛筆を持って文字を書き始める
この順番は偶然ではありません。音声での理解が先にあって、初めて文字が意味を持つのです。"apple"という文字列を見て意味がわかるのは、「アポー」という音と赤いリンゴの映像がすでに頭の中にあるからです。
ところが、日本のおうち英語では、この順番が逆になることがよくあります。英語の音声にほとんど触れていない段階で、いきなりフォニックスやアルファベットの読み書きから始めてしまう。これは、まだ日本語を一言も聞いたことがない赤ちゃんに、ひらがなの書き取りをさせるようなものです。
フォニックスは「音と文字をつなぐ技術」です。つなぐべき「音」がまだ頭の中になければ、フォニックスは空回りします。まず耳と口を育てて、それから目と手を育てる。この順番が、自然な言語習得の順番です。
Phase 1(耳と口)→ Phase 2(目と手)
私がおすすめするのは、おうち英語のリソースを2つのフェーズに分けて使うことです。
英語の音に大量に触れる段階。歌、動画、アニメ、ゲーム、読み聞かせ——すべて「聞く」「見る」「声に出す」が中心。文字は意識しなくてOK。お子様の頭の中に英語の音と映像のストックを蓄積する時間です。
目安:英語の歌を何曲か歌える、簡単な指示("Stand up" "Sit down")が聞いてわかる、色や数字や動物の名前を10〜20個言える——このくらいの「耳と口の土台」ができたら、Phase 2に移行してOKです。
Phase 1で蓄積した音を、文字に結びつける段階。フォニックス、アルファベットの読み書き、レベル別リーディング。「この音はこの文字で書くのか!」という発見が、Phase 1の土台があるからこそ意味を持ちます。
目安:Phase 1で数ヶ月〜1年ほど音声に触れた後。お子様の年齢や英語への親しみ度合いによって調整してください。
7つのリソースを2フェーズで整理する
ゆりさんが紹介されていた7つのリソースを、このフェーズの視点で整理してみます。繰り返しますが、どのツールも素晴らしい——問題は「いつ使うか」だけです。
おすすめの導入順序
もし私が「おうち英語をゼロから始める保護者」にアドバイスするなら、こんな順番を提案します。
ステップ1(Phase 1の入口):Pinkfongの歌 + Little Fox のレベル1ストーリーで、英語の音を毎日浴びる。10〜15分/日で十分。「勉強」ではなく「楽しい動画の時間」として。
ステップ2(Phase 1の定着):数ヶ月後、お子様が英語の歌を口ずさんだり、簡単な英語("Yes" "No" "Thank you" など)を自然に使い始めたら、Khan Academy Kids を追加。英語の指示を聞いて活動する経験を積む。
ステップ3(Phase 2へ移行):お子様が20〜30の英単語を音で知っている段階で、Jolly Phonics またはトド英語で「文字と音の対応」を学び始める。「ああ、"cat" ってこう書くのか!」と気づく瞬間が訪れます。
ステップ4(Phase 2の発展):フォニックスの基礎が身についたら、Raz-Kids で実際の本を読み始める。Education.com のワークシートやTyping Clubで「書く」力も同時に育てる。
「全部一度に始めたい」という気持ちへ
ここまで読んで、「それだと時間がかかりすぎない?」と思われたかもしれません。
たしかに、Phase 1 → Phase 2 の順番を守ると、フォニックスを始めるまでに数ヶ月〜半年のタイムラグが生まれます。その間、「うちの子はまだABCも書けないのに、あの子はもうフォニックスをやっている」と焦る気持ちもわかります。
でも、言語は身体行動です。土台のない場所に建物を建てても、すぐに崩れます。Phase 1で耳と口の土台をしっかり作ったお子様は、Phase 2に入ってからの進みがびっくりするほど速い。フォニックスを「音と文字の対応」として瞬時に理解できるからです。一方、耳の準備なしにフォニックスを始めたお子様は、一つひとつの文字と音の対応を機械的に暗記する必要があり、時間がかかる上に定着しにくい。
急がば回れ——Phase 1の「遠回り」が、実は最短ルートなのです。
シリーズ「ネットの英語教育アドバイスを考える」について
この記事は、オンラインで見つけた英語教育に関するアドバイスやリソースを、言語教育の専門家の視点から評価するシリーズの第1回です。
ネット上には素晴らしいアドバイスがたくさんありますが、「何を使うか」だけでなく「いつ・どの順番で使うか」「自分の子に合っているか」を考えることが大切です。このシリーズでは、保護者の皆さんが情報の海で迷わないための羅針盤になれたらと思っています。
「こんなアドバイスを見つけたけど、James先生はどう思う?」というリクエストがあれば、ぜひお問い合わせからお気軽にお送りください。
Ready Englishでは、お子様の現在の英語レベルに合わせたカリキュラムを設計します。Phase 1の段階にいるお子様には「耳と口を育てる」コンテンツを中心に。Phase 2に進む準備ができたお子様には、教科書『Here We Go!』に対応したSRS学習で体系的に読み書きの力を育てます。
お子様は今、Phase 1? Phase 2?
まずはアンケートから、最適なプランを見つけましょう。