背景にあるのは、2021年に全面実施された学習指導要領の改訂です。この改訂により、中学校の英語は「かつてないほど難しく」なりました。何がどう変わったのか、そして小学生の今からどんな準備ができるのか、具体的に解説します。

何が変わったのか:3つの大きな変化

変化①:単語数が大幅に増えた

1,600+
中学3年間の必修単語数
以前の学習指導要領では約1,200語だった必修単語が、現行では1,600〜1,800語に増加。さらに小学校で学ぶ600〜700語と合わせると、中学卒業時には最大2,500語を習得する想定です。

これは単純に「覚える量が増えた」だけの話ではありません。中学1年生の教科書の最初のページから、小学校で学んだ単語は「すでに知っているもの」として扱われます。つまり、小学校で十分に定着していない場合、中学入学の初日から「知らない言葉だらけ」の状態で授業が始まることになります。

変化②:「4技能」から「5領域」へ

以前の中学英語は「読む・書く・聞く・話す」の4技能で評価されていました。現在はこれが5つの領域に分かれています。

5
評価される5つの領域
①聞くこと ②読むこと ③話すこと(やり取り) ④話すこと(発表) ⑤書くこと。「話す」が「やり取り(対話)」と「発表(プレゼンテーション)」に分かれたのが大きなポイントです。

これは、単に英語の知識を問うのではなく、「英語を使って何ができるか」を評価するということです。定期テストでも、リスニング、自由英作文、スピーキングテストが出題されるようになり、「文法を暗記すれば点が取れる」時代ではなくなりました。

変化③:授業が英語で行われるようになった

2021年の改訂で、中学校の英語の授業は「英語で行うことを基本とする」と明記されました。実際にどこまで英語で行われているかは学校によりますが、以前のような「先生が日本語で文法を解説し、生徒がノートに書き写す」スタイルからは大きく変わっています。

授業中に先生が英語で指示を出し、生徒同士が英語でペアワークやグループ活動を行う場面が増えています。英語を「聞いて分かる耳」と「反射的に反応できる力」がないと、授業についていくこと自体が難しくなっています。

小学校と中学校のギャップ:なぜつまずくのか

問題の本質は、中学英語が難しくなったこと自体ではなく、小学校の英語と中学校の英語の間に大きなギャップがあることです。

小学校の英語
「外国語活動」+「外国語科」
歌・ゲーム・会話中心
読み書きは「慣れ親しむ」レベル
成績は評価されるが受験には関係なし
「楽しい」がゴール
中学校の英語
正式教科(5段階評価)
文法・読解・作文が中心
初日から読み書きが求められる
定期テスト・高校受験に直結
「できる」がゴール

小学校の英語は「英語に触れて、楽しさを知ること」が主な目的です。3・4年生の「外国語活動」では、歌やゲームを通じて英語の音に親しみ、5・6年生の「外国語科」では簡単な読み書きも始まりますが、あくまで「慣れ親しむ」レベルです。

ところが中学校に入ると、初日からbe動詞と一般動詞の区別、疑問文の作り方、英文の書き方が求められます。小学校で「Hello! I like pizza!」と楽しく言えていた子が、突然「"I am"と"I like"はなぜ違うの?」「"Do you"と"Are you"はどう使い分けるの?」という壁にぶつかります。

このギャップに対応できるかどうかが、中学3年間の英語の成績を大きく左右します。中1の1学期でつまずいた子は、そのまま英語が苦手科目になるケースが非常に多いのです。

次の改訂(2028年頃)でさらに難化する見込み

学習指導要領は約10年ごとに改訂されます。次の改訂は2028年頃の実施が見込まれており、英語についてはさらなる難化が予想されています。具体的には、小学校での英語時間の増加、中学校での文法項目の追加、そしてデジタルを活用した評価方法の導入などが議論されています。

2027年からは全国学力テスト(英語)がコンピュータベースに移行する予定で、「話す」テストがオンラインで実施される見通しです。英語教育の「本気度」は、今後さらに上がっていきます。

小学生の今からできる5つの準備

では、小学生のうちにどんな準備をすればいいのでしょうか。「英会話スクールに通わせればいい」という単純な話ではありません。中学英語で求められる力に照準を合わせた、具体的で段階的な準備が必要です。

準備①:アルファベットを「読める・書ける」状態にする

意外に思われるかもしれませんが、小学6年生の段階でアルファベット26文字をすべて正確に書ける子は多くありません。特に小文字の「b」と「d」、「p」と「q」の区別、「g」「j」「y」の正確な書き方は、中学校の教師が「最初に苦労するポイント」として挙げる項目です。

中学校では初日から英文を書く活動が始まります。アルファベットを「見て分かる」ではなく「何も見ないで正確に書ける」状態にしておくことが、最も基本的な準備です。

準備②:フォニックスで「音から読める力」を育てる

英語の綴りと発音の関係(フォニックス)を知っていると、初めて見る単語でも「たぶんこう読むんだろう」と推測できます。これは中学校で新しい単語が次々と出てくるときに、大きな武器になります。

「cat = c-a-t」「dog = d-o-g」のような簡単な単語を音で分解・合成できる力があれば、中学の教科書に出てくる新出単語への抵抗感がぐっと下がります。

準備③:be動詞と一般動詞の「感覚」をつかむ

中学英語で最初に、そして最も多くの生徒がつまずくのが、be動詞(am/is/are)と一般動詞(like/play/haveなど)の使い分けです。

「I am happy.」と「I like pizza.」——小学校では両方とも「自分のことを言う文」として何となく使っていますが、中学校ではこの2つが文法的にまったく違うものとして教えられます。否定文の作り方も疑問文の作り方も異なるため、ここが混乱すると後の学習すべてに影響します。

小学生のうちから、「I am = 自分が何であるか/どんな状態か」「I like = 自分が何をするか」という感覚的な区別を身につけておくと、中学での学習がスムーズになります。

準備④:「毎日少しずつ」の習慣を作る

中学の英語についていくために必要なのは、週1回90分の集中学習よりも、毎日15分の積み重ねです。言語の習得は筋トレと同じで、頻度が命です。

1日15分、週6日続ければ、1ヶ月で約6時間、半年で約36時間の学習時間になります。この「毎日英語に触れる習慣」を小学生のうちに作っておくことが、中学での成功の土台になります。

準備⑤:「英語ができる」成功体験を積む

最後に、最も大切なのはお子様が「英語ができる!」と感じられる体験を持つことです。英検5級に合格する、外国人に自己紹介できる、英語の本を1冊読み切る——どんな小さなことでも「自分は英語ができる」という自信があれば、中学校で難しい内容に直面しても諦めずに取り組めます。

逆に、小学校の英語で「なんとなく分からない」まま中学に入ると、最初のテストで悪い結果が出た瞬間に「英語は苦手」というレッテルを自分に貼ってしまいます。一度そうなると、挽回するのは何倍も大変です。

まとめ:早めの準備が、中学3年間を変える

中学英語が難しくなったのは事実です。しかし、それは「中学に入ってから対処すればいい」問題ではありません。小学生のうちに正しい準備をしておけば、中学校の英語は「つまずく科目」ではなく「得意科目」にすることができます。

大切なのは、闇雲に英語に触れることではなく、中学で実際に求められる力に照準を合わせた、段階的で具体的な準備をすることです。

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